C・W・ウィンター+アンダース・エドストローム『The Anchorage 投錨地』(2009)を東京都写真美術館で観た。この映画は次号の映画紹介で取り上げようと思ってもいたけど、今のところ観ようと思ってすぐ観られるものではないし、この作品に限らずだけど、建築的視点でその存在を定位させてしまうのがなんとなく憚られる。
上映後に松井宏さんを司会にして行われた監督二人のトークは、丁寧に答えようとする雰囲気が伝わってきて、通訳を介してながら内容も充実していた。特に印象に残ったのは、撮影した時期、スウェーデンでは1日に5時間くらいしか使えないので、撮影以外の食事をしたり喋ったりする長い時間が大切だったという話。だから、たとえ映画の素人であっても、そうした時間を一緒に楽しめる仲間たちとこの映画を撮ったのだという。彼ら二人の関係についても、馬が合って、一緒に時間を過ごしたり作品をつくったりするのが好きだから、一緒に作品をつくる。カーティスさんはけっこう批評的な言葉も操りそうな雰囲気だったけど、まずそうした日常的な実感があってこそで、論理は後からついてくるということを強調していた。こういう話は甘い精神論と受け取られてしまいがちだし、実際そういう仲良し関係は世間に多いにしても、きっと真実は含まれていると思う。
アンダースさんのスチールとムービーの違いの話。スチールでは瞬間と瞬間のあいだを撮るようにしてきたが、ムービーではすべてが撮られてしまうので、考え方を変える必要があったこと。ムービーでは弱いイメージを重ねていくことで、むしろ強いイメージを用いるよりも確かな底流をつくれるのではないかということ。