チラシ(→PDF)の裏面にも載せたけど、イベント「建築写真の内と外」の関連資料。

●山田脩二さんの主な写真集/著書等

  • 写真集『山田脩二 日本村1969-1979』三省堂、1979[品切れ]
  • 著書『カメラマンからカワラマンヘ』筑摩書房、1996[品切れ]
  • 写真集『日本の写真家39 山田脩二』岩波書店、1998[品切れ]
  • 展覧会カタログ『山田脩二の軌跡─写真、瓦、炭…展』兵庫県立美術館・神戸新聞社、2006[品切れ]
  • 写真集『山田脩二 日本旅1961-2010』平凡社、2010

品切れが多いものの、最初の『日本村1969-1979』以外は、古本でそれほど手に入れにくくはないと思う。昨日の日記で引用した自伝『カメラマンからカワラマンヘ』は、山田さんの写真や他の人による評論などの抜粋も多くておすすめ。

●多木浩二「建築写真」関連著作

  • 鼎談:磯崎新・多木浩二・篠山紀信「建築写真の今日的な意味を考える──建築家と写真家との触れ合いが……。」『Commercial Photo Series 建築写真・表現と技法』玄光社、1978[山田さんの写真についても言及]
  • 講演録『建築と写真の現在 vol.1』TNプローブ/大林組、2007
  • 著書『建築家・篠原一男──幾何学的想像力』青土社、2007[多木さんが撮影した篠原作品の写真と、それについてのコメントが掲載]

●多木浩二による主な山田脩二論/インタヴュー

  • 「出来事のかたち──山田脩二の『日本村』について」『アサヒカメラ』1977年8月号(所収『山田脩二 日本村1969ー1979』三省堂、1979)
  • インタヴュー「山田脩二『60年代の東京』をふりかえる──あのころ都市には“野性”があった」『写楽』1984年11月号[インタヴュアーに多木さんの記名はないが、山田さんの証言による]
  • 「写真家山田脩二 はるばると……」『山田脩二の軌跡─写真、瓦、炭…展』兵庫県立美術館・神戸新聞社、2006

以下は2000年以降で目に付いた建築写真関連の雑誌特集や展覧会カタログなど。

いま手元にあるものにざっと目を通してみたけれど、多木さんが参加した『TN Probe vol.14 建築と写真の現在』以外は、ほとんど多木さんの仕事が言及されていない。たしかに多木さんが撮影・発表した建築写真はそれほど数が多いわけではないし、いわゆる「建築写真」について多くの発言があるわけでもない。しかし現に多木さんの建築写真をめぐっては、『新建築』の編集者だった石堂威さんが建築界での「事件」と呼ぶほどのことがあったのだから(『多木浩二と建築』アンケート)、この状況はあまりにも不自然というほかない(多木さんのほうでなんらかの協力依頼を断った可能性や、「触れてくれるな」オーラを出していた可能性はある)。今回『多木浩二と建築』で、石堂さんや長谷川逸子さんの証言や、(建築写真の第一線で活躍する)阿野太一さんの論考が載ったのは、こうした偏りを補正するという意味でも有意義だったと思う。
ちなみに上記の資料のなかでは、大橋富夫さんが驚くほど率直に多木さんの写真を評価していた。それは大橋さんのフランクさとともに、建築写真家としての自信に裏打ちされた発言だったと思う。今度のイベントでは山田さんからどんなお話が聞けるだろうか。

篠原さんの「未完の家」を多木さんが撮って『新建築』に掲載されたとき(1971年1月号)はショックだったね。「こんなことを建築の専門誌でもやっていいのか」っていう驚きね。それに、写真家や編集部がよしとしたとしても、「こういう写真を建築家も認めるのか」という驚きもあった。それなら僕が『建築文化』でやればよかったと思って、正直「先にやられたな」という感じだった。『建築文化』はどちらかというとそういう方向を探りながら、同じ専門誌でおとなしめの『新建築』と競い合っていたから、これをなぜ『建築文化』でやらなかったんだ、って思ったりしてね。多木さんはそれをよくわかっていながら、あの写真を思い切って『新建築』編集部に出して、編集部もそれを掲載したわけです。英断ですよ。僕は、建築写真はカタいと自分でも思いながら、それでも建築写真はかくあるべしという意識がなかなか抜けなかったから、そういうときにあの写真を見て、「ここまで自由にできるんだ」と思って勇気付けられもしました。多木さんの写真は好きで、やっぱりすごいなと思います。それ以降、自分の写真の幅を広げるときに自信を持ってやれたし、もう迷うこともなかったね。あの頃は一番面白い時代だったと今でも思います。
───大橋富夫インタヴュー「『建築写真』はカタくない」聞き手=山岸剛、『建築雑誌』2010年7月号

建築写真に関する特集や企画は散発的にはあるのだけど、どうも歴史として蓄積していっている感じがしない。出版には権利関係のハードルもあるだろうけど、素材自体は多いわけだし、だれか写真を見るセンスがあって視野の広い人が、総合的な仕事をしてくれるとよいと思う。